8月半ばに梅雨時のような天候になったと思ったらまた猛暑が戻って、体がついていかないですね。コロナのデルタ株も猛威の拡大を続けていて不安が絶えない中、皆さん夏期講習はよく頑張って、どの学年もどの教科でもテキストや、追加のプリント教材をしっかりこなすことができました。目黒区立中央中学校の人は9月初めの前期期末テストに照準を合わせる時期になりましたね。夏休みに入ったころ、2~3人の生徒さんから、「覚えるのが苦手だが、どうしたら覚えられるか。」という趣旨の質問をもらいました。その時一応お答えしたことは、ほかの多くの生徒さんにも役立つかと思うので、お伝えしておきます。

・記憶する能力について

全く初めて接する、それぞれ関連のない事柄を覚えるのは大変なことです。普通一度に5~6個覚えるのが限度と言われています。(どんなに記憶力に優れている人でも10個程度)ですから、英単語を200個覚えるという課題が出て一週間後にテストされて満点をとれる人がいるとしたら、200個のう少なくとも150くらいはもともと知っていた、と考えられます。一度に大量の知識を覚え込むのは人間の脳にとっては負担が大きすぎます。脳がキャパオーバーの状態になると、間違って覚えたり、複数の項目をごちゃませに覚えたりするミスが出始めます。そうなったら覚える数を増やすのはストップしなければなりません。

 では、新しいことは一回に5~6個のことしか覚えることはできないのかということになりますが、そこには工夫の余地があります。新しいことの中に、関連性がある、また、新しいといってもすでに知っていることと関連しているといった場合は関連付けて記憶することができるので、覚える苦労が軽減できます。その手法を使っても、一度に覚えられることはせいぜい10個~15個くらいでしょう。ですから、覚えるべき事を絞り込む必要があるのです。

・三分法

覚えるもののリストを三つに区分してください。

一つはすでに確実に知っているもの、次は、何となくイメージはあるけどあやふやなもの、三つめは全くイメージのないもの、です。マーカーで色分けしてみるとよりと思います。例えば1つ目はグリーン、2つ目は黄色、3つ目はオレンジ、という具合です。まず、黄色のグループに立ち向かってください。少しはイメージがあるわけですから、あやふやなところ(英単語で言えばつづりの細かい所、など)に意識を集中して克服すればグリーンに転換していけるはずです。黄色の大半をグリーンにできたら、オレンジに取り掛かりましょう。

何回か覚えるという作業をやったら、オレンジの中からグリーンや黄色に変わるものが出てくるはずです。そうなったら一旦オレンジグループの中の黄色組を集中攻撃して征服します。そうやって敵を絞り込みながら楽に、優位に戦いを進められるよう心掛けてください。中には何度試みても撃退されてしまう敵もいるでしょう。そういうものには究極のラスボスマーク、ピンク色か何かでマーキングして、じっくり包囲戦で攻略して下さい。

・覚えても忘れてしまうケース

まず、忘れることは脳の健康のために不可欠な重要な働きだということを知っておきましょう。

忘れる機能に障害があるケースがまれにあって、それこそ何か月も前の食事内容とか、友人との会話内容とか、全部覚えていて忘れることができない症状です。これは完全な病気で、大変苦しいものだそうです。うらやましいとか思ってはいけません。不必要な情報(一週間前の昼食に何を食べたか、など)は片っ端から消去していくのが脳にとって普通のことなのです。

 長く残る記憶は特に重要な物や、感情を大きく揺さぶったような事柄です。普通の食事内容は忘れても、特別な食事、例えば誕生日とか最初のデートとか、そういう時の内容は長期記憶(脳内の別の場所)に入って消えません。すごく嬉しかった、悲しかった、怖かった、等のことも忘れずに覚えているものです。

 勉強のために暗記するものには、それらのようなインパクトがないので、一旦は短期記憶に入っても、放置すれば日々の献立と同じように消去されます。それを防ぐためには、忘れないうちに知識を思い出す作業をすることです。それを2~3回やればその知識は長期記憶に入って忘れなくなるということです。人によって、短期記憶に入ったものが消去されるまでの時間は差があると言いますが、ふつう3~4日から10日くらいは残存していると言いますから、最悪の場合でも覚えた後3日くらいたってから復習するようにすれば知識は定着していくはずです。